第1回「DNAとゲノムから見る生物の進化や多様性」

講師:藤山秋佐夫先生(国立遺伝学研究所 特命教授)

配信日時:2024年5月17日午後1時〜5月27日午後1時

 私たち人類は生態系の一員としてさまざまな生物と共存しています。その中には人に都合の良い性質(形質)が選抜され、さまざまな用途に利用されている作物や家畜も含まれます。それらは、せいぜい数種類の野生種から人に都合の良い形質が繰り返し選抜されることにより、さまざまな文明の発展を支えてきた原動力の一つとなったのです。こうした作物や家畜たちを生み出した変化は数千年をかけ、おそらく数多くの試行錯誤を繰り返しながら進んだものと思われますが、一方で、地球と生物の全体は数百万年~数億年の時間をかけて相互に影響を及ぼしながら変化し、多様な生態系を形成してきたと考えられます。高等学校の教科書では生物の進化と多様性の獲得が主要な学習項目の一つにとりあげられていますが、それでは、こうした生物の全般におきた変化と作物や家畜におきた変化との間にみられる時間軸の違いは、どこに原因があるのでしょうか。単に「人が手を出したから」というだけでは説明が難しそうです。この講座の第2シリーズでは、生命活動の根源ともいえる遺伝情報を自己複製する能力の特性と進化の原動力とについて考えてみたいと思います。(もう少し詳しく

【地球の歴史は地層に、すべての生物の歴史は染色体に記されてある  木原均(1946)】

国立遺伝学研究所には、この一文がレリーフに刻まれ展示されています。ここに上記のエッセンスが凝縮されていると言っても過言ではないでしょう。親の性質が代々子孫に伝わり現れる一連の現象を遺伝といいますが、この文が書かれた時代には、遺伝の本体とされていた染色体の構成成分のうち核酸とタンパク質のいずれが遺伝物質なのか、あるいは他の生体物質であるのかが議論の的となっていたのです。
遺伝物質の物質的実体がDNAであり、分子構造が二重らせんとなっていることは1950年代以降に次第に明らかにされ、今では中学校で学習する内容となっています。
この講演では、高等学校で学習するレベルのDNAの構造と複製のメカニズムなど分子生物学の基礎から始め、ヒトゲノム、霊長類ゲノム、シーラカンスゲノムなどの解読など、私が関わってきたDNAとゲノムの研究を中心に話題を提供する予定です。

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