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リチャード・ロバーツとフィル・シャープが、制限酵素、電気泳動、遺伝子の分断を説明します。

やぁ!リッチ・ロバーツです。…そして私は フィル・シャープです。1970年代、コールド・スプリング・ハーバー研究所で、私たちはいくつもの重要なツールや技術を開発しました。それらを使って、分断された遺伝子という驚くべき発見が生まれたのです。 私たちが開発した最初の“ツール”は、酵素の一種で制限エンドヌクレアーゼ、または簡単に制限酵素と呼ばれているものです。1971年、ハミルトン・スミスとダン・ネイサンズはDNAを切断し分析する制限酵素を世界で初めて使いました。制限酵素はDNAの特別な配列を読んで、糖とリン酸からなる骨格を切断します。フィルと私は異なる切断特異性を持った新しい制限酵素を同定しました。 [酵素] これらの制限酵素を使って、大きい断片のDNAが小さい遺伝子のサイズの断片に切り分けることができます。これは重要でした。なぜなら遺伝子を研究し特徴づけるために、遺伝子のサイズのDNAを何回も同じように作りだす方法が必要だったからです。制限酵素認識部分は特異的で、DNA断片を同じ酵素で切ると、いつも同じDNA小断片ができてきます。 ターゲットとなるDNAの認識配列の出現頻度によって、制限酵素はDNA分子を何ヶ所も切ったり、全く切らなかったりします。70年代後半から80年代前半にかけて、コールド・スプリング・ハーバーの私の研究室で、現在知られている制限酵素の 3/4以上を単離同定しました。 [酵素][認識配列] [切断][任意のヌクレオチド][ロバート研究室で分離] リッチと私は、アデノウイルスのような単純なウイルスのDNAについて研究していました。そのDNAは35,000塩基対あります。私たちは、制限酵素を使って、アデノウイルスのDNAを小さい断片に切り分けました。 [タンパク質の殻][アデノウイルス] 例えば、Eco RIと呼ばれる制限酵素は、GAATTCという配列のあるDNAのGとAの間の骨格を切断します。 アデノウイルスのDNAを小さい断片に切り分けます。DNA断片は、分析ができるように分ける必要がありました。メセルソンとスタールが使ったような超遠心分離でも可能でしたが、それは高価で、時間がかかりました。 [制限酵素] ゲル電気泳動は、タンパク質を分離するのに使われていましたが、DNA断片を分けるのにも理想的な技術でした。電気泳動は電流を使って、多くの孔の開いたスポンジのような基質の中で、異なったサイズの分子を分けます。より小さい分子は大きな分子に比べてより簡単にゲルの穴を通り抜けるので、より速く移動します。タンパク質の分離にはポリアクリルアミドゲルが使われていました。 しかしながら、ポリアクリルアミドゲルは小さい分子しか分けることができないので、遺伝子のサイズのDNAを分離することはできませんでした。コールド・スプリング・ハーバーで、私はジョー・サムブルック、ビル・サグデンと一緒に、高度に精製した海藻からアガロースゲルを作りました。これにより、 DNA 分子を数百ヌクレオチドから10,000ヌクレオチド以上の長さのものまで分けることができました。 [アガロースゲル] ゲルは、電気を通す塩溶液と一緒に水槽の中に沈んでいます。 [電源] ピペットを使い、DNAサンプルをアガロースゲルの中に作られた穴に載せます。DNAサンプルは無色ですが、青い“追跡”染料を加えます。これにより、サンプルを載せやすくなり、またDNAがゲルを通って移動する様子を目で追跡することができます。 DNAの骨格に、負に荷電した酸素を含んだリン酸があることを思い出してください。そのためDNA分子は全体的に負に荷電しています。電流を流すと、負に荷電したDNAは電気泳動槽の正の極に向かって移動します。 [リン酸基][窒素塩基] DNA分子は、アガロースの基質の孔を“レプテーション”、つまり、蛇のような動きによってくぐり抜けます。より短いDNA断片は、任意の時間で、長い断片よりも、より速くより遠くへ移動します。それが、アガロースゲルの中で、DNA断片をサイズによって分けることができる理由です。 [電源をクリックしてスイッチオン] [ゲルマトリックス] [負に荷電したDNAがマトリックスを通って移動する] 私たちは、DNAを染色するために蛍光染料のエチジウムブロマイドも導入しました。エチジウムブロマイドは二重らせんに強固に結び付き、紫外線を当てると蛍光を発します。これで分離されたDNAが辿り着いた場所を見ることができます。後の解析のために、写真を撮ります。 [UV光で可視化したゲル] [マーカー] [ゲル写真] 制限酵素で切断した、どのDNA断片も、”マーカー”と比べることで大きさを決めることができます。マーカーとは、長さが分かっているDNAの断片のことです。異なる制限酵素を組み合わせて切断することで、制限酵素の“地図”を作ることができます。 例で見てみましょう。手元に15,000塩基対(15kb) のDNA断片があったとしましょう。 EcoRIで切って、ゲル電気泳動にかけると、2つのバンドが見えました。そのバンドと“マーカー” DNAを比べることで、バンドの長さを測ることができます。 ご覧のとおり、ひとつは8キロベース (8kb) で、もうひとつは7 kbです。ですからEcoRIは15 kbのDNAをたった1回しか切りません。 他の酵素、BamHIでこの15 kbのDNAを切断すると、2つのバンドが現れました。5 kbと10 kbのバンドです。EcoRIと同様、BamHIも、15 kbのDNAを1回だけ切って、2つの断片にしました。 でもBamHIの切断部位とEcoRIの切断部位の位置関係が分かりません。BamHIの切断部位について、2種類の地図ができる可能性があります。 どちらのBamHIの切断部位が正しいか調べるために、EcoRIとBamHIの両方を使った“二重消化”をすることができます。これにより、それぞれの制限酵素の切断部位を地図にすることができます。二重消化によって、DNAから、長さ7. 5, 3 kbの長さのバンドができました。 二重消化のデータと、EcoRIとBamHIのそれぞれの消化の結果を比べると、8 kb のEcoRIの断片が無くなっていて、それが5 kbと3 kbの長さの断片に”置き換わって“いることに気がつきます。このことから、ひとつのBamHI部位が8 kbのEcoRI部位の内部に存在していることが分かります。 最終的なEcoRI/BamHIの地図は、二重消化のデータとひとつずつの酵素による消化のデータを合わせたもの全てと一致します。 制限酵素地図を使う方法は、ゲノム地図を作るのに使われましたし、今でも使われています。これらの地図は非常に有効です。なぜなら、私たちは遺伝地図とDNAの物理地図を比べることができるからです。私たちは遺伝子の位置をDNA断片上に決めることができます。 1970年代までに、転写の詳細、つまり、DNAのコード領域から、メッセンジャーRNAが作られることについては細菌の細胞で調べられていました。特に、私たちは細菌のmRNA分子とそれに対応する DNAは、“同一線上にある“関係であることを知っていました。すなわち、mRNAとDNAを並列した時、この2つの分子は全領域に渡ってぴったり合わさるのです。 [細菌のDNA] しかし、同じ実験を真核生物のmRNAとDNAで行うと、合わさったRNA/DNAの断片ではDNAの明らかな”ループ“が観察されました。私たちはこれを Rループと呼びました。Rループは非コード配列に違いありません。 [ Rループ] 博士研究員のリッチ・ジェリナスと一緒に、私たちはmRNAとDNAの違いに注目し始めました。フィル・シャープと私の作ったアデノウイルスの制限酵素地図の情報を元に、私はアデノウイルスのDNAを切って、特別な断片を単離しました。 [制限酵素地図] 私は1本鎖のBamHI DNA断片を使いました … …そしてそれをアデノウイルスのメッセンジャー RNAと混ぜました。ルイーズ・チョウとトム・ブローカーの助けを借りて、DNA/RNAのハイブリッドとRループができているのを電子顕微鏡で観察しました。 mRNAの一方の端の3か所で、BamHIで切った DNA断片とハイブリッドを形成していました。つまり、2つのRループが電子顕微鏡で見えたということです。DNAは、対応するmRNAの配列が無いために、ループになってはみ出していました。 [DNAとmRNAの配列が一致した領域] 私たちが仮定したようなRNAとDNAが“同一線上にある“関係では無いことがはっきりしました。DNA上の遺伝子はmRNAの配列に比べて分断されていました。制限酵素で切断された ”正しい“DNA 断片を使った結果により、私たちはDNA上でのmRNA配列の開始位置、および、どのDNA断片が残りのmRNAをコードしているのかを決定しました。 1977年のCell誌に発表した論文、“アデノウイルス2のmRNAの5’末端における、予想外の配列の並列”の中で、私たちは電子顕微鏡写真を使いました。 リッチがコールド・スプリング・ハーバーで仕事をしていたころ、私はMITでの実験で同様の結果を得ていました。分断された遺伝子の発見は、遺伝子がどのように構成されているかについてのそれまでの認識に革命をもたらしました。

factoid Did you know ?

リッチ・ロバーツは、ゲームが大好きで、お気に入りのひとつはクロケット[訳注:ゲートボールの原型]です。彼によるとクロケットはポケット・ビリヤードの技術とチェスの戦法を結びつけたものだそうです。彼はノーベル賞の賞金の一部を家の前庭のクロケット用の芝生の整備に使いました。

Hmmm...

細菌には分断した遺伝子がありません。なぜないのでしょう?分断した遺伝子の進化的な利点と不利な点は何でしょうか?