かずさDNA研究所の研究グループ(遠藤裕介室長)は、細胞の中の脂質を網羅的に調査し、免疫細胞が脂質をどのように使い分けているかを明らかにしました。
私たちの体には、病原体や異物から身を守る「免疫細胞」があります。免疫細胞は、感染や炎症が起こると、細胞の中で使うエネルギー源や物質を大きく変化させます。特に脂質は、細胞のエネルギー源になるだけでなく、細胞の膜を作り、細胞の性質や情報のやり取りにも関わる大切な物質です。しかしT細胞やB細胞などの免疫細胞が脂質をどのように使い分けているのかは、まだ十分にはわかっていません。
本研究では、細胞の中の脂質を網羅的に調べる「リピドミクス」と、働いている遺伝子を調べる「トランスクリプトーム」の二つの先端的な手法を組み合わせて解析を行いました。T細胞とB細胞では、細胞の中にある脂質の種類に大きな違いがあることがわかりました。T細胞では炎症や情報伝達に関わるアラキドン酸を含むリン脂質が多く、B細胞では魚油などにも多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)を持つリン脂質が多く認められました。つまり、同じ免疫細胞でも、使っている脂質の「材料」や「組み合わせ」が異なっていることがわかりました。
本研究成果は、感染症、自己免疫疾患、アレルギー、がんなどの病気が起こる仕組みの解明につながる可能性があります。将来的には、脂質代謝を目印にした新しい診断法や、免疫細胞の働きを調整する新しい治療法の開発につながることが期待されます。
論文タイトル
Comparative lipidomic and transcriptomic profiling reveals distinct fatty acid utilization in T and B cells across mouse and human
著者
Keiko Nakano, Kiyoe Sumi, Keisuke Miyako, Arisa Ito, Toshiyuki Kobayashi, Keisuke Yamamoto, Yukie Iwao, Toshio Kanno, Takaharu Kimura, Satoru Yokoyama, Kazuko Yamada, Hikari K Asou, Mayumi Maruyama, Yoko Suzuki, Yusuke Kawashima, Osamu Ohara and Yusuke Endo
掲載誌
Scientific Reports
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