テーマ 23遺伝子はDNA上に散在します

フレッド・サンガーがDNA配列決定法の概要を説明します。

フレッド・サンガーです。50年代に、私はタンパク質のアミノ酸配列を最初に決定しました。私はインシュリンというタンパク質では51個のアミノ酸が特有の順番で並んでいることを示しました。 [インシュリン] 遺伝暗号はアミノ酸の並び順を決めますから、DNA配列はアミノ酸配列と同一直線上の関係にあります。 [アミノ酸配列] しかしながら、タンパク質のアミノ酸配列が分かったところで、遺伝子の正確なヌクレオチド配列は分かりません。遺伝暗号は余剰なのを思い出してください。ひとつ以上のコドンが、ひとつのアミノ酸をコードしていることがあります。 ここに、これらのアミノ酸に対して余剰なコドンを示します。 70年代の初め、私は遺伝子のヌクレオチドの配列を正確に決める方法を開発しました。ほぼ同時期に、アラン・マクサムとウォルター・ギルバートが別の配列決定法を開発しました。私の“鎖伸長反応停止”法が今日では研究室でもっともよく使われている方法になっています。 私の方法は、DNA複製に関するアーサー・コーンバーグの初期の研究が元になっていました。新しいDNA鎖はすでにある鎖を鋳型として合成されることを思い出してください。さて、ここでポリチミンDNAを例として使います。 [ポリチミンDNAの鋳型] “新しく入ってくる“デオキシヌクレオチド(dNTP) の5’位の炭素は鎖の末端の3’ 位の炭素に付け加わります。それぞれの位置の水酸基は、中央のリン酸とエステル結合を形成します。このようにしてヌクレオチド鎖は伸びていきます。 [5’位の炭素][3’ 位の炭素] 私の配列決定法の鍵は、特別な化合物である、ダイデオキシヌクレオチド(didNTP)です。デオキシヌクレオチドのように、ダイデオキシヌクレオチドも鎖に取り込まれ、その5’末端でリン酸ジエステル結合を形成します。 しかしながら、didNTPには3’の水酸基(OH)がありません。これは次に取り込まれるヌクレオチドとつながるために必要なものです。ですから、didNTPが付加されると伸長が止まるのです。 私は4種類の異なる反応を準備しました。それぞれのヌクレオチドについての配列情報を与えるため、ひとつずつの反応です。それぞれの反応には、鋳型となる DNA、短いプライマー(20ヌクレオチド程の長さ)、DNA合成酵素、それに4種類のdNTPs(1種類だけ放射標識したもの)が含まれます。 [鋳型DNA][ DNA合成酵素][プライマー] 1種類のdidNTP(A, T, C, または G)がそれぞれの反応に加えられました。 [ダイデオキシヌクレオチド] それから私は配列決定のステップを実行しました。アデニン (A) で停止反応を見てみましょう。 最初に、DNAを沸点近くで変性させ、1本鎖にします。高い温度では、DNA分子の熱運動で、相補的な DNA鎖を結合させている弱い水素結合は分断されます。 温度を下げると、鋳型の相補的な配列部分にプライマーが結合します。コーンバーグの初期の研究によって、DNA合成酵素が複製を始めるためにはプライマーが必要であることが分かっていました。 DNA合成酵素はdNTPsとdidNTPsを区別しません。didNTPsが入る度に、この場合didATPですが、合成は“停止”し、大きさの異なるDNA鎖ができあがります。 この配列の例では、didATP(紫)が反応を停止します。dATPが入ることもあります。これは、放射性標識した追跡の目印になりますが、伸長には影響しません。 DNA分子は何億個もあるので、どのアデニンの位置ででも、伸長反応が止まる可能性があります。結果として、異なる長さのDNA鎖のコレクションができます。 同じことが他の3つの伸長停止反応にもいえます。 それから、それぞれの反応物を、尿素を含んだポリアクリルアミドゲルの別々のレーンに載せます。尿素は電気泳動の間、DNA鎖が元に戻らないようにするために加えます。 リン酸がイオン化しているために、DNA分子は負に荷電しています。ですから DNA は電場で正の極に移動します。DNA分子がポリアクリルアミドの基質上で動く速さは、その長さに依存します。 同時に+極に移動する青い染料もサンプルに加えて、シーケンシングゲルでのDNAの動きを追跡します。この染料は短いDNA断片よりも少しだけ速く動きます。 電気泳動の間、短いDNA分子は長いDNAよりも早くゲルを下に移動します。何百万もの同じサイズの中断された分子が同じ場所に辿り着き、ゲルに“バンド“を形成します。 電気泳動の後、ゲルをX線フィルムに挟みます。合成されたDNAの中にある、放射性標識したアデニンはβ線を放出してフィルムを感光させます。ゲル中のDNAのバンドの位置が記録されます。 それからシーケンシングゲルを、下から上へと“読み”ます。多様な反応停止産物のレーンのバンドから鋳型のDNAのヌクレオチド配列が分かります。 [配列][続く] ふつう、1回のシーケンス反応で、200~500塩基対の配列を読むことができます。

factoid Did you know ?

フレッド・サンガーがDNA の配列決定法の研究をしていたころ、多くの科学者たちはRNAの配列決定を試みていました。彼らはRNAは小さいので、配列決定も簡単に違いないと思っていました。

Hmmm...

技術的にはRNAの配列決定はDNAより難しいのです。なぜこれが正しいと思いますか?