生体分子解析センター
生体中には多種多様な代謝物が存在し、健康維持や増進に寄与するだけでなく、そのバランス変化が様々な疾患の背後に潜む重要な要素であることも明らかになりつつあります。 これらの生体分子を網羅的かつ高深度に解析する技術として、メタボロミクス/リピドミクスが近年注目されており、重要な代謝変化を高精度、高感度に捉えて、未知の分子や新しい代謝経路の発見に繋がることも期待されます。生体物質解析センターでは、「ノンバイアス型解析」や「フォーカッシング型解析」技術の先端的開発を進め、ヘルスケア・医療・農業・食品などの様々な分野に応用し、広く産業の発展を支援することを目指しております。
メタボロミクス
生体中の代謝物は親水性と脂溶性のものに大別され、メタボロミクスでは主に親水性の代謝物が解析の対象となります。生体物質解析センターでは、親水性代謝物を網羅的かつ高深度に探索するために、「質量分析計(MS)」を用いた高感度な分析法と「液体クロマトグラフフィー(LC)」・「ガスクロマトグラフィー(GC)」などの高精度分離法を組み合わせて、最新技術の開発と応用展開を行なっています。GC-MS解析(フォーカッシング型)は一次代謝物(糖、アミノ酸、有機酸など)、LC-MS(ノンバイアス型)は二次代謝物(芳香族配糖体、アミノ酸誘導体など)をそれぞれ主な対象としています。
リピドミクス
リピドミクスにおいては脂溶性の代謝物(脂質)が主な解析の対象となります。生体物質解析センターでは、独自の高精度なin-house解析ソフトウェアや高網羅的な分離分析技術(LC-MS)などを組み合わせて、脂質代謝物の全般について最先端のリピドミクス解析(ノンバイアス型)を展開しています。また、生体中の極微量な脂質を捉えるために、高深度なLC/MS解析(フォーカッシング型)も技術展開しており、より多くの脂質のフォローアップに取り組んでいます。
フォーカシング(ターゲット)解析
メタボロミクス/リピドミクス技術は、主にフォーカシング(ターゲット)型もしくはノンバイアス(ノンターゲット)型という2つのアプローチに分類され、対象となる代謝物の範囲・物性・濃度などに合わせて選択する必要があります。フォーカシング型解析は、現在広く普及しているメタボロミクス技術であり、三連四重極型(Triple-Q型)MSを用いたMultiple Reaction Monitoring(MRM)と呼ばれる分析法が適用されることが多く、極微量に存在する代謝物の検出や、標的パスウェイの代謝物群の“高深度な” 探索に適しています。
ノンバイアス(ノンターゲット)解析
ノンバイアス型解析は、高分解能な四重極飛行時間型(QTOF)MSなどを用いた“高網羅的な”探索技術であり、近年注目されています。フォーカシング型では分析前に予め設定した代謝物のみが解析対象となるために探索範囲は限られますが、ノンバイアス型は予め対象分子を絞り込まず、代謝物の定性および定量的なデータを同時的に取得可能なData Dependent Acquisition(DDA)モードと呼ばれる分析手法などを駆使して、未知をも含めた代謝物の同定や変動の探索に適しています。