盗タンパク質(NL72)

日本近海に生息しているキンメモドキは、ウミホタルの発光と同じように、ルシフェリンという基質がルシフェラーゼという酵素によって酸化されて、発光します。キンメモドキはウミホタルを食べることにより、基質であるルシフェリンを獲得していることは過去の研究から示されていましたが、酵素の由来は不明でした。

中部大学などの研究グループは、水族館の協力のもと、発光しているキンメモドキからルシフェラーゼタンパク質を採取しました。そして質量分析によりアミノ酸の配列を解析したところ、その配列はトガリウミホタルのルシフェラーゼ由来と考えられるものでした。そこでまず、キンメモドキのゲノム中にこのタンパク質をコードする遺伝子を探しましたが、見つかりませんでした。

その後の様々な解析により、キンメモドキがルシフェラーゼタンパク質をエサのウミホタルから獲得していることが分かりました。これは大変不思議なことです。エサ由来のタンパク質を、消化せずに体内に取り込み利用することが示されたのは、これが初めてです。そこで、この現象をKleptoprotein(盗タンパク質)と名付けました。

どのようなしくみでエサに含まれる特定のタンパク質を消化せずに取り込むことができるのかは不明ですが、将来このしくみが明らかになれば、インシュリンや抗体医薬のようなタンパク質製剤を摂取しやすい飲み薬にすることができるかもしれません。

 

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