ショートスリーパー遺伝子(NL69)

現代人の多くが感じている慢性的な睡眠不足は、心血管疾患やがんなどの病気のリスクを高めることが知られています。しかし世の中には、短時間の睡眠でも健康に支障をきたさない、ショートスリーパーと呼ばれる人もいます。彼らは普通の人といったい何が違うのでしょうか。

カリフォルニア大学の研究グループは3世代にわたってショートスリーパーがいる家族のDNA配列を調べて、家族間で比較しました。そして、β1-アドレナリン受容体遺伝子(ADRB1)のDNA配列の中で、ショートスリーパー特有のCがTに変化している箇所を見つけました。そこで、同じ変異をもつマウスを作製したところ、ヒトの場合と同様に睡眠時間が減り、活動時間が増えることが分かりました。また、この変異をもつマウスでは、深い睡眠状態であるノンレム睡眠から一気に覚醒することができ、覚醒状態を促進するニューロンの数が普通のマウスよりも格段に多いため、活動時間が長くなるのではないかということが分かりました。

別の研究では、ショートスリーパーは、楽観的でエネルギッシュであり、同時に複数の仕事をこなすことができる傾向があると言われています。今回の結果をきっかけに、効果的に睡眠を取るための研究が進み、自由自在にショートスリーパーのようなスーパーマンになれると良いですね。

 

A Rare Mutation of β1-Adrenergic Receptor Affects Sleep/Wake Behaviors.
Shi G. et.al.
Neuron (2019)
DOI:10.1016/j.neuron.2019.07.026
カリフォルニア大学サンフランシスコ校HPの紹介文(英語)
https://www.ucsf.edu/news/2019/08/415261/after-10-year-search-scientists-find-second-short-sleep-gene

Facebook
X
SDGs