ベンサミアナタバコの全ゲノム解読に成功
~植物科学やバイテクの発展に期待~
2023/2/10
研究開発かずさDNA研究所、名古屋大学と国立遺伝学研究所は、共同でベンサミアナタバコの全ゲノムを解読しました。
ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)は、煙草の原料となるタバコ(Nicotiana tabacum)の近縁種で、ナス科タバコ属に属します。ベンサミアナタバコは、扱いの手軽さから、実験植物として植物学の基礎研究で長年利用されてきました。
最近では、外来の有用タンパク質を植物細胞内で生産させる技術により、医薬品の製造にも用いられています(例えば、COVID-19のワクチンを田辺三菱製薬の子会社が開発;2月3日に商用化断念を発表)。
また、作物の品質アップや収量増、病害虫の被害や連作障害の回避に役立つ「接ぎ木」が成立するしくみの研究にもベンサミアナタバコが用いられてきました(名古屋大学 生物機能開発利用研究センター)。
タバコ属植物は近縁種との交雑が繰り返されたことで複雑なゲノム構造を持つため、これまで断片的なゲノム情報しか公開されていませんでした。本研究では、長いDNA配列を読むことができる最新のロングリード塩基配列解析装置を用いて、ベンサミアナタバコのゲノムを染色体レベルで端から端までひとつづきで決定することに世界で初めて成功しました(約28億塩基対)。
ベンサミアナタバコの全ゲノム情報が得られたことにより、タバコ属植物を用いた基礎研究が加速し、新しい農業技術の開発や、病害虫の感染防御など植物病理学の研究が飛躍的に進むことが期待されます。
詳しくは、リリース資料をご覧ください。
論文タイトル:Genome sequence and analysis of Nicotiana benthamiana, the model plant for interaction between organisms
著者:Ken-ichi Kurotani, Hideki Hirakawa, Kenta Shirasawa, Yasuhiro Tanizawa, Yasukazu Nakamura, Sachiko Isobe, Michitaka Notaguchi
掲載誌:Plant and Cell Physiology
DOI: 10.1093/pcp/pcac168