魚の浮袋と動物の肺(NL59)

ダーウィンは著書『種の起源』の中で、「魚の浮袋から肺ができた」と記していますが、最近は「酸素の少ない淡水で肺呼吸を始めた魚が海に戻り、不要になった肺が浮袋に進化した」説が有力です。解剖学的な証拠や系統解析により、食道の腹側にできた袋状の器官が肺に、背側にできた器官が浮袋になったと考えられています。

国立遺伝学研究所などのグループは、マウスの発生を研究するなかで、細胞の分化を誘導する shh 遺伝子の発現によって、浮袋もしくは肺になる袋状の器官が背側か腹側のどちらに作られるかが決まるのではないかと考えました。

そこで、マウスと様々な魚類で shh 遺伝子の発現に関わる領域の配列を比較したところ、マウスや肺があり浮袋がないシーラカンスなどでは、shh 遺伝子を食道の腹側で発現させるための配列があるのに対し、肺がなく浮袋があるメダカなどはその代わりに、食道の背側で shh 遺伝子を発現させるための配列をもっていました。

つまり、遺伝子発現の変化と、肺から浮袋への形態変化がうまく連動して進化したことで、魚は浮袋をもつようになったと考えられるのです。遺伝子の働く時期と場所が少し変わるだけで、からだの形が変わるなんて不思議ですね。