こころの進化に関わる遺伝子(NL65)

 人のこころの個性(性格)は、どのように進化してきたのでしょうか。東北大の研究グループは、精神疾患の関連遺伝子に着目し、チンパンジーやゴリラなどを含む15種類の哺乳類、さらにネアンデルタール人などの古人類のゲノム配列を比較しました。

 性格に関わるセロトニンやドーパミンを運ぶタンパク質をコードしているSLC18A1という遺伝子は、進化の課程で、特に大きく配列が変化していました。この遺伝子の136番目のアミノ酸が、ヒトを除く全ての哺乳類ではアスパラギン(Asn)であったのに対して、ヒトではスレオニン(Thr)とイソロイシン(Ile)という2つのタイプが約3:1の割合で共存していることがわかりました。また、ネアンデルタール人がThr型を持っていたこと、その後、人類がアフリカから出た前後でIle型が出現し、自然選択を受けIle型の割合を増加させていったことが明らかとなりました。

 これまでの研究から、Thr型はIle型に比べて神経伝達物質の運搬効率が低いことや、Thr型がうつや不安、性格5因子のひとつである神経症傾向と関連していることがわかっています。しかし、Ile型に完全に置き換わることなく、私たちのこころの多様性に関わる遺伝的変異が自然選択によって積極的に維持されている可能性が示されました。

 私たちのこころの多様性は進化的に意味があるものなのかもしれません。