合成生物学 酵母の1本ゲノム(NL65)

 染色体の本数は、ヒトでは23対46本、チンパンジーでは24対48本と生物間でも異なることがあります。染色体の数の違いが生物の生育にどのように影響するのかを調べるために、米国と中国のグループが、酵母で染色体の本数を減らす実験を行いました。

 分子生物学研究でよく用いられる出芽酵母は16本の染色体をもち、一倍体でも生育できます。実験では、ゲノム編集技術(CRISPR-Cas9)を用いて、追加する染色体のセントロメア領域と余分なテロメア領域を除去して別の染色体と融合し、段階的に染色体の本数を減らしていきました。

 最終的に米国のグループは染色体を2本まで、中国のグループは染色体を1本にすることができました。意外なことにそれらの酵母は、細胞分裂の速度が少し遅いものの、生育には大きな影響は見られませんでした。また、染色体の長さが関係すると考えられる減数分裂への影響もそれほどみられませんでした。

 最近では、出芽酵母の全ゲノムを人工合成するSc2.0プロジェクトも行われています。また、人為的に高倍数体化して32本以上の染色体をもつ酵母も作られています。これらの研究から染色体の存在意義が明らかになると期待されています。

 染色体の数が大きく違う生物でも、同じ種と呼べるのでしょうか。皆さんはどう思いますか?

Creating a functional single-chromosome yeast.
Shao Y. et. al.
Nature (2018)
Doi: 10.1038/s41586-018-0382-x

Karyotype engineering by chromosome fusion leads to reproductive isolation in yeast.
Luo J. et. al.
Nature (2018)
Doi: 10.1038/s41586-018-0374-x

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