捕食者の臭いを感じる(NL64)

 サルがヘビを怖がったりネズミがキツネを怖がったりする本能的な行動は、遺伝的なものと考えられていますが、その行動を司る遺伝子などについてはまだよく分かっていません。

 筑波大学などの研究グループは、実験で用いられているマウスの精子に人為的にランダムに変異を導入し、その子孫の約1万3千222匹(632家系)から、キツネの臭い成分に似た2-メチル-2-チアゾリン(2MT)を嗅いでも、すくんで動けなくなること(すくみ行動)がないマウスの家系を見つけました。
 
 そして、このマウスの家系でゲノムのどこに変異が入っているかを調べたところ、刺激性の化学物質や温度のセンサーとして知られているTrpa1遺伝子に変異が見つかりました。次に、本当にTrpa1遺伝子が関わっているかを調べるために、Trpa1遺伝子のないノックアウトマウスを作成しました。すると、このマウスでもすくみ行動がみられませんでした。さらなる実験から、Trpa1遺伝子が本能的な恐怖行動に関わっていることを明らかにしています。
 
 研究グループは、マウスのTRPA1は2MTを感知し、ヒトのTRPA1は感知しないことを実験的に調べています。別のグループの研究では、ヒトのTRPA1は、「冷たい」を痛みと感じるしくみなどに関わるとされています。

Large-scale forward genetics screening identifies Trpa1 as a chemosensor for predator 2-evoked innate fear behaviors.
Y Wang et. al.
Nature Communications
doi:10.1038/s41467-018-04324-3
筑波大学プレスリリース
https://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/180523liu.pdf

Facebook
X
SDGs