A型は下痢になりやすい?(NL64)

 血液型は、赤血球の表面にあるタンパク質(H抗原)に結合する、糖の化合物(糖鎖といいます)の違いによって決まります。A型はN-アセチルガラクトサミン、B型はガラクトース、AB型は両方ありますが、O型にはこれらの糖鎖がありません。糖鎖の違いはABO式血液型糖転移酵素というひとつの遺伝子の数ヶ所の塩基配列の違いにより、A、B、Oのいずれかの遺伝子型になります。

 血液型が性格と関係するかについては、科学的な根拠がほとんどありませんが、細菌の感染と関係する可能性が報告されています。今回、米国の研究グループは、バングラデシュで下痢に見舞われた人から採取した大腸菌株H10407を入れた水を、ボランティアで参加した健康な成人約100人に与えました。するとA型またはAB型の人は、81%が中程度から重度の下痢になりましたが、O型かB型のグループは約半分でした。

 実は、腸管上皮細胞にも赤血球の表面とよく似た糖鎖があり、病原菌はそれぞれ特異的な糖鎖を選んで結合するといわれています。そこで、各血液型の血液サンプルにH10407を含む腸管毒素原性大腸菌のもつ接着因子(アドヘシン)であるEtpAを加えたところ、A型で強く凝集反応がみられました。また、ヒトの小腸の腸管を模した培養環境系でも、EtpAを持つ菌がA型の小腸表面に強く結合することが示されています。この結果は、新たなワクチン開発に活かすことができると期待されています。

Enterotoxigenic Escherichia coli–blood group A interactions intensify diarrheal severity.
P Kumar et. al.
Journal of Clinical Investigation
doi:10.1172/JCI97659

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