酵母にモルヒネを作らせる(NL53)

日本人の 2 人に 1 人はがんにかかり、3 人に 1 人はがんで亡くなる現在、闘病生活の質をどう保つのかに注目が集まっています。がん特有の痛みを和らげるために使われるモルヒネは、患者を元気にし、延命効果もあることから、今後需要が高まると推測されています。

しかし、モルヒネなどの植物の有用二次代謝産物は、その複雑な構造のため、化学合成による大量生産は困難です。そこで、植物からの抽出法に代わる生産方法として、遺伝子を改変した微生物に作らせるという研究が進んでいます。ただし、モルヒネのように生合成経路が 18 段階もある複雑な過程を全て組込んだ微生物は、まだできていません。

最近、米国の研究グループが、モルヒネやコデインなどの麻薬成分を合成する反応の中間体であるレチクリンを、酵母でブドウ糖から合成できるようにした、と発表しました。少し前には、カナダのグループが、酵母でレチクリンからコデインを含むモルフィナン・アルカロイドの合成に成功しています。

つまり、近い将来、 “ただ”培養するだけで、麻薬成分を作る、特殊な酵母が誕生する可能性があるのです。この技術には薬剤が安価になる利点もありますが、悪用されないようなルール作りが必要です。