ニワトリから恐竜をつくる?(NL53)
1990 年出版の SF 小説『ジュラシック・パーク』では、バイオテクノロジーを駆使して恐竜を復活させましたが、現実世界では、まだまだ不可能です。それでも爬虫類から鳥類への進化のしくみを研究することで、現実となる日が来るのかもしれません。
米国の研究チームはこれまでに、どのようにして爬虫類の口になる部分、吻(フン)が鳥類のクチバシに変化したのか、鳥の種によるクチバシの形態の違いはどのようにして生じるのか、についての研究を行ってきました。
多くの生物種の研究から、顔の骨格形成には、FGF と WNT という分泌性のタンパク質が関わっていることが分かっています。そこで、卵の中で顔が形成されている時期のワニとニワトリの胚で、これらのタンパク質の働きを比較したところ、ニワトリではタンパク質が発現している範囲が広く、後にその部分がクチバシになることが分かりました。
次に、ニワトリ胚のクチバシになる予定の領域で、これら 2 つのタンパク質がつくられるのを人為的に抑制したところ、ワニや恐竜のヴェロキラプトル(中生代の獣脚類)の口に似た骨格に変化したのだそうです。
古生物学者のジャック・ホナーは、ニワトリの遺伝子のいくつかを祖先型に戻すことで、『チキノサウルス』を作れるのではないかと言っています。この結果を見ると、案外、夢物語ではないのかもしれませんよ。