「地上最強生物」のゲノム(NL58)

「地上最強生物」と呼ばれることもあるクマムシという生物をご存知でしょうか?

クマムシは体長 0.05~1mm ぐらいの緩歩(かんぽ)動物門に属する動物で、乾燥させても仮死状態になって生きのびることができ、さらに、真空や大量の放射線にも耐えることができます。

東京大学を中心としたグループは、クマムシが極限的な環境に耐性を示す仕組みを明らかにする目的で、特に強い耐性を持つヨコヅナクマムシのゲノムを解析し、約 2 万個の遺伝子を同定しました。うち 50% 強は他の動物に似た遺伝子があり、40% が新規遺伝子、1.2% が微生物などに由来する外来遺伝子でした。

そのうち、Dsup (Damage Suppressor)と名付けられたクマムシ固有のタンパク質は、クマムシの核 DNA に結合します。そこで、Dsup タンパク質をヒトの培養細胞に導入したところ、X 線照射による DNA の切断率が半分に減少し、また活性酸素による切断からも DNA が保護されていることが分かりました。

クマムシの研究が進むと、ヒトも放射線に耐えられるようになるのでしょうか。

Extremotolerant tardigrade genome and improved radiotolerance of human cultured cells by tardigrade-unique protein.
Hashimoto T, et. al.
Nature Comm. (2016)
DOI: 10.1038/ncomms12808

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