熱による痛みを感じない動物(NL58)

ネズミの仲間なのに 30 年も生きるハダカデバネズミは、地中に集団で棲息しています。外見も変わっていますが、長寿のほか、がんになりにくかったり、炎症反応を促進する唐辛子の成分カプサイシンに抵抗性があるなど変わった特徴を多くもっています。

このハダカデバネズミは、熱に対する痛覚の反応がないことも知られています。ヒトやネズミが炎症や熱による痛みを感じるときには、炎症部位で産生した神経成長因子(NGF)が感覚神経の細胞表面にある受容体(TrkA)に結合して、痛みを増感させ、信号が脳に伝わります。そのため、痛みを感じることができない全身無痛症の患者さんに、NGF や TrkA の遺伝子に変異がみつかる場合があります。

ドイツとイギリスの研究グループが、なぜハダカデバネズミが熱を感じないのかを調べたところ、ハダカデバネズミの TrkA 遺伝子の DNA 配列が変化していることを見つけました。そして、細胞を使った実験で、ハダカデバネズミの TrkA は NGF の刺激に対する反応性が低いことを明らかにしました。

ハダカデバネズミは温度変化の少ない地中に住み、常に密集して肌をこすり合わせる生活の中で、熱に対する敏感なセンサーが必要なくなったのかもしれません。