DNA鑑定で離散家族再会支援(NL77)

紛争や迫害などで難民となり、離れ離れになった親子の再会を支援するためのDNA鑑定が、米国を中心とした研究者から提案されています。現時点ではアメリカ合衆国にいる子供と中央アメリカにいる親を引き合わせることを対象としていますが、世界中の離散家族を念頭においています。
DNA鑑定は犯罪捜査や遺体の身元確認などで使われています。ゲノム上で数塩基のDNA配列(例えばTAGA)が数回から十数回繰り返されているSTR(short tandem repeat)と呼ばれる部分をPCRで増幅すると、繰り返し数に応じた長さのDNAが検出されます。
DNA鑑定用のSTRは20ヶ所あまり確立しており、すべてのSTRが一致するのは一卵性の双子を除けば本人しかありえません。
1ヶ所のSTRにつき父方、母方に由来する2パターン現れます。親子ではそれぞれのSTRで2パターンのうち片方が一致します。
過去に実施されたの家族再会支援では、保管された子供のDNAと名乗り出た親のDNAを照合していたため非効率でしたが、今回の提案は、離散した多数の子供と多数の大人のSTR情報をデータベース化して照合しようというものです。
実施にあたっては複雑な事情を持つ人たちの情報が迫害政権に利用されないようなノウハウも必要ですが、国際行方不明者委員会(ICMP)の活動による蓄積もあり、難民支援NGOなどと連携し、DNA鑑定を使って離散家族の再会を支援することは十分可能と研究者たちは主張しています。

Using DNA to reunify separated migrant families.
Barnert E, et.al,
Science (2021)

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