de novo遺伝子 (不凍タンパク質)(NL71)

タイセイヨウダラは大西洋北東部から北極海に生息し、成体で体⾧1.5m、体重50㎏近くにまでなる大型魚です。北極海は真冬には0℃以下なることもあり、多くの魚類は体が凍ってしまいます。しかし、タイセイヨウダラは平気です。血中や組織内に含まれる不凍タンパク質が、氷の微小な結晶に結合して大きな結晶になるのを止めるのです。

不凍タンパク質(AFP)は、1969年に発見され、その後も低温環境下に生息する魚や昆虫、植物、微生物などから数種類が見つかっています。タラ科の不凍タンパク質は、二糖類で修飾されたアラニン-アラニン-スレオニンの繰り返し構造をもつ分子量2,600-33,000の糖タンパク質です。不凍タンパク質を加えた液体では小さな氷ができても、それが大きくならないことから、冷凍食品の品質を保つ目的にも用いられています。
オスロ大学の研究グループは、タラ科の不凍タンパク質の遺伝子のルーツを調べていました。そして、3つのアミノ酸の繰り返しからなるタンパク質をコードする遺伝子が、他のゲノムが解読されている生物にみつからないことから、この遺伝子が遺伝子をコードしないDNA配列(非コードDNA)から誕生した、de novo(新たにつくられ た)遺伝子ではないかという結論に至りました。
これまでの知識では、既存の遺伝子が重複などにより新しい遺伝子が生じると考えられていましたが、de novo遺伝子が数多く見つかるようになり、進化の新しいモデルが必要になってきました。

ゼロから誕生した遺伝子
Nature ダイジェスト(2020)
DOI:10.1038/ndigest.2020.200130

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