渡り鳥は地磁気を視る?(NL77)

10月も半ばを過ぎると北の国から冬鳥が渡ってきます。渡り鳥たちがどのようにして飛ぶ方位を認識しているのか、研究者たちは分子生物学的手法を用いてこの謎に取り組んでいます。

これまでの研究で、磁気を感知するタンパク質の候補に、トリの目の網膜にある青色光受容体(クリプトクロム)の一種、Cry4が挙げられています。Cry4は体内時計の調節に関わるCry1/Cry2と似た配列をもつ遺伝子として見出されましたが、Cry1/Cry2のような24時間周期での発現量の変動は観察されず、別の機能が想定されていました。渡りをするヨーロッパコマドリでは渡りの季節になるとCry4の発現量が増えることがわかり、磁気センサーである可能性が高まってきました。

そこで欧州のグループは、大腸菌に大量につくらせたヨーロッパコマドリのCry4タンパク質で物理学的な実験を行い、 Cry4が磁気を感知しているのかを調べました。そして、Cry4にある複数のトリプトファン残基で、青色光により電子移動反応が起こりラジカル対が生成すること、ラジカル対の生成が磁気により変化することを確認しました。また、留鳥のハトやニワトリのCry4タンパク質を同様に調べて、ヨーロッパコマドリほどには磁気感受性がみられないことも確認しています。

ヒトも網膜にクリプトクロムがあるそうですが、私たちが地磁気を感知しているのかはわかっていません。もしかしたら空間認識能力と関係しているかもしれませんね。

 

Magnetic sensitivity of cryptochrome 4 from a migratory songbird.
Xu J, et.al,
nature (2021)
鳥類の磁気受容の謎の解明に向けて大きく前進
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 9(2021)

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