果物の食べごろはいつ?(NL77)

お店に並んでいる果物には、イチゴやサクランボなどすぐ食べた方が美味しいものと、バナナやリンゴなど、しばらく置いた方が甘く柔らかくなるものがあります。これは果物に樹上で熟すタイプと、追熟(ついじゅく)といって果物が木から離れたあとに熟すタイプがあるからです。ナシは追熟しないけれども洋ナシは追熟する、ほとんどのブドウは追熟しないけれどマスカットは追熟するというように、追熟するかしないかは、植物の系統分類とは関連が見られません。

追熟にはエチレンという植物ホルモンが関係していることはよく知られていますが(リンゴはエチレンを多く放出するので、一緒にするとバナナの熟成が早まるなど)、そもそもなぜ追熟する果物としない果物とが存在しているのか、その生物学的な意味はわからないままでした。

その答えについて、東大などの研究グループは、果物が種子散布者への報酬として進化したという知見を元に文献を調査し、追熟するかしないかは、種子散布者が、樹上で果実を食べる鳥なのか、樹木から落ちた果実を食べる動物なのか、の違いに対応している例を多く見つけました。

種子散布者が鳥である植物の果実は、鳥が認識しやすい赤や黒みがかった色で、種子ごと丸のみできるように小さいという特徴があり、樹上で成熟します。一方、追熟する果実は一般的に種子が大きく、大きな種子を飲み込めない鳥に果肉だけ食べられてしまうことを避けるため、樹上では熟さないという戦略をとったと考えられます。

 

Evolutionary ecology of climacteric and non-climacteric fruits
Fukano Y, Tachiki Y.
Biology Letters(2021)

東京大学プレスリリース

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