昆虫のゲノム編集が容易に(NL80)
ゲノム編集は、その生物が元々持っている遺伝子を書き換える(多くの場合には遺伝子の働きを不活性化する)技術です。異種生物の遺伝子を導入する遺伝子組換え技術とは区別され、日本でも農作物などへの応用が認められています。
昆虫においても、カイコなど古くから産業応用された生物種が、バイオ素材・ワクチン製造などに使われたり、ハチミツだけでなく、コオロギなどの昆虫食などの食品市場、カブトムシなどのペット市場も、ゲノム編集技術の応用先として注 目されています。しかし、昆虫におけるゲノム編集は、受精直後の硬い殻をもつ卵に注射する技術の困難さなどが研究の妨げとなっていました。
今回、卵ではなく成虫に注射することで、その子のゲノム編集を非常に効率よく起こす方法が開発されました。京都大学などのグループは、網翅目(もうしもく)のチャバネゴキブリと甲虫目(こうちゅうもく)のコクヌストモドキの成虫に、ゲノム編集ツールであるRNAとタンパク質の複合体を注射し、眼の色に関わる遺伝子に変異を導入しました。すると、産んだ卵の中から親とは違う眼の色をもつ個体を高確率で得ることができたのです。
この方法は、原理的にはほとんどの昆虫に適用できます。容易に昆虫の成長や栄養・味を変えることができれば、多彩な昆虫食材がスーパーマーケットに並ぶ日も遠くないかもしれません。
DIPA-CRISPR is a simple and accessible method for insect gene editing.
Yu Shirai, et.al,
Cell Reports Methods (2022)