麻疹感染は免疫システムを リセットする(NL70)
麻疹(ましん)は「はしか」とも呼ばれ、麻疹ウイルスの感染によっておこる感染症です。麻疹は感染力が強く空気感染するので、過去10年に限っても7回の流行*が確認されています。まれに 麻疹が原因で死に至ることがあり、その多くは二次感染**によるものとされ、麻疹ウイルスによる免疫機能の低下が示唆されていました。
*国立感染症研究所・感染症疫学センターHPより
**細菌やウイルスなどが原因の肺炎になることが多いようです
米国の研究グループは、麻疹がどのように免疫機能に影響するのかを、1滴の血液にある抗ウイルス抗体の種類を網羅的に検出するVirScan法で調べました。ワクチン接種を受けないまま、麻疹に感染した77人の感染前と感染後2ヶ月の血液を比べたところ、抗体の種類が人によっては11~73%の割合で失われていることが分かりました。
つまり、麻疹ウイルスに感染すると、それまでに獲得した免疫記憶(獲得免疫)が失われてしまい、他の様々な感染症にかかりやすくなることを示しています。そして、この免疫記憶の低下は、麻疹ワクチンの接種ではみられませんでした。最近の流行は、海外からの持ち込みや、20-40歳代の患者が多いなど、かつての流行パターンとは異なってきています。幼児期の接種だけでは充分な免疫を獲得できていない、年齢を重ねると免疫機能が低下することがその理由です。2016年からは小学校就学前に2回目を接種していますが、機 会のなかった方は接種を検討されてはいかがでしょうか。
Measles virus infection diminishes preexisting antibodies that offer protection from other pathogens.
Mina MJ. et.al.
Science (2019)
DOI:10.1126/science.aay6485