隕石から核酸の材料となる糖(NL70)
生命はどのように誕生したのか。ソ連(現ロシア)のオパーリンが1922年に「無機物から有機物が蓄積され、有機物の反応によって生命が誕生した」とする化学進化説を唱えましたが、どこでどのようにして有機物ができたのかについては議論が続いています。多くの生物のDNA配列の解析により、共通祖先に近い生物は高温環境を好むものが多いことが分かり、深海熱水孔が生命誕生の場所であると考えている研究者も多くいます。
一方で、有機物の起源を宇宙空間に求める研究者もおり、これまでに隕石からアミノ酸の一部や核酸塩基などを見つけてきましたが、DNAやRNAに含まれる糖はまだ見つかっていませんでした。そこで、東北大学を中心とした研究グループは、新しい分析方法を開発し、1969年にオーストラリアに飛来したマーチソン隕石と2000年にモロッコで発見されたNWA801という炭素原子を含む隕石を調べて、リボースやほかの形の糖を見つけました。DNAに含まれる糖(デオキシリボース)ではなく、RNAに含まれる糖(リボース)が見つかったことは、RNAを起点に生命が誕生したとするRNAワールド仮説に沿う結果でもあります。
折しも探査機「はやぶさ2」が、3億㎞離れた小惑星「リュウグウ」でサンプルを採取し、帰路についたところです。今年の年末には地球に帰還するそうなので、楽しみに待ちたいと思います。
Extraterrestrial ribose and other sugars in primitive meteorites.
Furukawa Y. et.al.
Proceedings of the National Academy of Sciences, USA (2019)
DOI:10.1073/pnas.1907169116
東北大学大学院理学研究科・理学部 お知らせ
http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20191119-10540.html