親の経験が子に遺伝する?(NL47)

親の経験が子に遺伝する、いわゆる「獲得形質の遺伝」についてはこれまで否定的な論調が中心でした。
しかしながら、最近になってDNAそのものやDNAとタンパク質の複合体であるクロマチンの化学的な「しるし」が子に伝わる例が見つかってきており、DNAの配列変化を伴わない「変化」が子孫に伝わる可能性がでてきています。
ひとつは、理化学研究所の研究グループによるものです。
ショウジョウバエの受精卵に高温などのストレスを与えると「しるし」が変化して、発現が抑えられていた遺伝子が発現できるようになるのですが、その効果が子世代にも伝わっていたのです。
その上、親子二世代に熱ショックストレスを与えると、その影響は孫世代にまで伝わりました。

アメリカのグループが発表した別の例では、ネズミにアーモンドに似た匂いと電気ショックを同時に与えて、匂いに反応して忌避反応するように学習させました。
すると、学習したネズミの子孫も同じ匂いをかいだだけで身構える行動がみられたとのことです。
また、この親子のネズミの脳を調べたところ、この匂いに対する受容体が増加していました。

いずれの例でも化学的な「しるし」が子孫に伝わったと考えられていますが、親から子にどのようにして「しるし」が伝わったのかは謎として残っています。

KH Seong et al.
Inheritance of stress-induced, ATF-2-dependent epigenetic change.
Cell. 2011 Jun 24;145(7):1049-61.
DOI: 10.1016/j.cell.2011.05.029.

理化学研究所プレスリリース

BG Dias and KJ Ressler
Parental olfactory experience influences behavior and neural structure in subsequent generations.
Nature Neuroscience 17, 89–96 (2014)
DOI:10.1038/nn.3594

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