蛍光シルクの量産化(NL62)
日本の養蚕業は、明治時代の一時期には国の輸出額の60%を占める主要産業でしたが、現在は衰退の一途を辿っています。養蚕業を活性化させる一手として、2007年に農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、暗いところで紫外線を当てると緑色に光る「蛍光シルク」を産生する遺伝子組換えカイコを作り出しました。
具体的には、カイコのフィブロインタンパク質に、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合させた組換え遺伝子をカイコで発現させます。このような遺伝子組換え生物の取り扱いは 、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」 で規制されています。
そこで、農研機構と群馬県は試験飼育を重ね、2017年9月にようやく、農家の通常の施設での遺伝子組換えカイコの飼育が承認され、養蚕農家での生産が始まりました。
蛍光タンパク質は熱に弱く、60℃以上の温度で色が失われてしまうため、一般的な煮繭法では繰 糸(マユから生糸をつくること)ができません。そのため、農研機構から技術の提供を受けた長野県岡谷市の製糸場が繰糸を行っています。もうすぐ、蛍光シルクを使った商品が市場に並ぶことになります。青やオレンジの蛍光シルクも開発中とのことで、新しい技術が日本の産業の活性化につながることが期待されています。