腸内細菌の遺伝的アップグレード(NL79)

私たちのおなかの中には、海苔や海藻の繊維質を分解する特別な腸内細菌がいることが知られています。Bacteroides plebeius(バクテロイデス・プレビウス)と呼ばれるこの細菌は、もともとこの分解能を持っていたわけではなく、海にいる微生物から分解にかかわる遺伝子を獲得したといわれています。しかしどのように遺伝子を獲得しているのかは不明なままです。

研究グループではまず、海藻を分解する能力をもった腸内細菌がどのくらいいるのかをヒトと動物の腸内細菌のコレクションを使って調べました。その結果、以前考えられていたよりも多くの腸内細菌が、様々な海藻繊維分解酵素をつくる遺伝子(細菌間で移動可能なDNA配列)をもっていることがわかりました。また、マウスを使った実験で、食事として海藻の繊維成分が与えられたとき、分解能をもつ腸内細菌が生着しやすくなることを明らかにしています。さらに、2,440人の腸内細菌のデータを使って、海藻の分解に関わる遺伝子の世界分布を調べたところ、海苔の分解に関わる遺伝子は圧倒的にアジア人の腸内細菌に多いこともわかりました。

腸内に定着している細菌を遺伝的にアップグレードすることで、病気の治療や健康維持ができるような未来が訪れるかもしれません。

 

Diverse events have transferred genes for edible seaweed digestion from marine to human gut bacteria.
Pudlo N.A., et.al,
Cell Host and Microbe (2022)

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