縄文人のDNA(NL57)

今や考古学の分野でもDNA解析は欠かせない技術となっています。日本のように高温多湿で酸性土壌だと、骨やDNAが分解されてしまうことが多いのですが、条件良くみつかった200体以上の縄文人でミトコンドリア(mt)DNAが解析されており、DNA配列から日本人のルーツを探る研究も行われています。しかしながら、mtDNAは母親のものしか遺伝せず、またサイズも小さいことから、縄文人のことをより詳しく知るには、核にあるゲノムの情報が必要でした。

そこで、国立大学法人総合研究大学院大学のグループは、福島県北部海岸地方にある三貫地貝塚から発掘された約3,000年前(縄文終期)の人骨の大臼歯からDNAを抽出して、次世代シーケンサーでDNA配列を解析しました。データを現代の日本人集団と比較すると、縄文人はアイヌ人と一番近く、次にオキナワ人と近いこと、約1万5000年前に東アジアからアメリカ大陸に渡った集団よりも先に分かれた古い集団であることがわかりました。また、現代の多くの日本人に伝えられたゲノムの割合は、13-21%程度と推定されています。
今も複数の古代人のゲノムが解析されていて、詳細な解析から日本人集団の成り立ちが解明できるのではないかと期待されています。

A partial nuclear genome of the Jomons who lived 3000 years ago in Fukushima, Japan.
Kanzawa-Kiriyama H. et al.
Journal of Human Genetics (2016)
doi:10.1038/jhg.2016.110

斎藤成也著『日本列島人の歴史』岩波ジュニア新書

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