短いRNAが遺伝に関わる?(NL48)

前回のニュースレターで親の経験が子に伝わる可能性があるという報告を紹介しましたが、その後、スイスの研究グループにより、経験の遺伝には短いRNAであるマイクロRNA (miRNA) が深く関わっていることが報告されました。
miRNAは、20~25塩基ほどの短いRNA分 子で、ヒトには2000種類ほどあるそうです。これらは、ゲノム上の特定の領域からつくりだされ、相補的な配列を持つメッセンジャーRNA (mRNA) に結合して遺伝子の発現を抑制する働きをしています。

研究グループは、若いマウスに強いストレスを与え、成長させたあとのmiRNA量をストレスを与えていないマウスと比較しました。
すると、血液や脳、そして精子内の多くの種類のmiRNAでその量に変化がみられたとのことです。ストレスを与えたマウスの精子由来のRNAを受精した卵子に導入したところ、そこから産まれた子供に行動や代謝の変調が遺伝したことから、精子内にあるmiRNAが子への遺伝に関わっているとしています。

研究グループはヒトでもmiRNAが同様の働 きをしているのかを研究しており、研究が進むことで、ストレスの影響などが血液で検査できるようになると期待されています。

K Gapp et al.
Implication of sperm RNAs in transgenerational inheritance of the effects of early trauma in mice.
Nature Neuroscience, April 13, 2014
DOI: 10.1038/nn.3695

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