涙のでないタマネギ(NL52)

タマネギを切るとなぜ涙がでるのでしょう?
この疑問にハウス食品の研究者が長年取り組み、2002年に催涙成分を作り出す酵素(アリイナーゼとLFS)を同定して、Nature誌に発表しました。
この研究は、レトルトカレーを開発する中で偶然に発見された、タマネギとニンニクを混ぜて炒めると緑色になってしまうという現象から始まっているそうです。2013年にはノーベル賞のパロディとして、「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」を行った科学者に与えられるイグノーベル賞をタマネギの催涙成分を作り出す酵素の発見で受賞しています。

涙のでないタマネギは、2008年にニュージーランド研究機関と協力して、遺伝子組換え技術を使ってこの遺伝子を働かなくして作製されました。このタマネギは残念ながら消費者に受け入れられる可能性は低いということで商品化とはなりませんでした。
今回は、遺伝子組換え技術ではなく、重イオンビーム照射による突然変異誘発によって、アリイナーゼの働きを弱くした品種を作り出しました。突然変異処理した種子(約1500粒)から選抜・自殖を3回繰り返して作出することができたとのことです。

このタマネギは、催涙性やタマネギ特有の辛み成分がなく、厚切りのままサラダに使ったりもできるそうです。商品化が楽しみです。

S Imai et al.
Plant biochemistry: An onion enzyme that makes the eyes water
Nature 2002 Oct 17;419(6908):685
DOI:10.1038/419685aCC Eady et al.

Silencing onion lachrymatory factor synthase causes a significant change in the sulfur secondary metabolite profile
Plant Physiology 2008 Aug;147(4):2096-106 Epub 2008 Jun 26
DOI: 10.1104/pp.108.123273

ハウス食品プレスリリース

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