最古のDNAサンプル(NL75)

シベリア北東部の永久凍土から1970年代初頭に発掘されていた100万年以上前のマンモスの大臼歯3本からDNAが抽出され、ゲノムが解析されました。これまでの最古の例は、カナダの永久凍土で見つかった約70万年前のウマ類(2013年論文発表)でしたが、さらに古い時代のものでも解読できる可能性が示されました。

解析は2017年に歯の一部(50㎎)を削り取ることから始まりました。古いサンプルがもつDNAは短く断片化していることが多いのですが、次世代シークエンサーで短い配列をたくさん読むことにより、約165万年前のサンプルから4,900万塩基対、約130万年前のサンプルから8億8,400万塩基対、約60万年前のサンプルからは37億塩基対のゲノム配列を取得できました(マンモスのゲノムサイズは約31億塩基対と推定されています)。

他のマンモスのゲノムとの比較から、北米大陸の南部に生息していたコロンビアマンモスが、ケナガマンモスと今回新たに見つかった系統のマンモスの交雑種であることがわかりました。また、ケナガマンモスに寒さへの耐性をもたらした遺伝的変化が、祖先種であるトロゴンテリーゾウにすでに存在していたことも明らかになりました。

100万年前はヒトの進化でいうと、原人から旧人が誕生した頃にあたります。もし、この時代の人類のゲノムが解読できれば、人類進化の謎が解けるのかもしれません。

 

Million-year-old DNA sheds light on the genomic history of mammoths.
van der Valk T, et.al,
Nature (2021)

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