時差ボケしないマウス(NL46)

私たちの体には、「概日(がいじつ)リズム」という体内時計のしくみが備わっています。

もし私たちが全く光の届かない洞窟の中に閉じ込められたとしても、約24時間の周期で睡眠/覚醒が起こります。このリズムは目から入る光によって明暗サイクルに合うように補正されるのですが、大きくずれると同調させるのに時間がかかります。この現象が「時差ぼけ」です。

時差ぼけを起こりにくくする方法がみつかれば、交代勤務で働く人に多い睡眠障害や生活習慣病などの病気の改善にも役に立つと考えられています。概日リズムの中枢は哺乳類では脳の視交叉上核(しこうさじょうかく:以下SCN)にあります。SCNを破壊すると、睡眠/覚醒のリズムが完全に失われてしまいます。

京都大学のグループは、SCNの細胞にある、AVP受容体を働かなくしたマウスを作製しました。驚くことに、このマウスは私たちが日本からアメリカに行くときのように昼間の時間を短くしても時差ぼけになりませんでした。
そこで、この受容体に作用する拮抗薬を作製して正常なマウスのSCNに直接投与したところ、時差ぼけを軽減させることができました。
拮抗薬のヒトへの応用には更なる研究が必要ですが、睡眠障害や時差ぼけ対策の新たな(睡眠導入型ではない)治療法の開発につながることでしょう。

京都大学プレスリリース
Y Yamaguchi et al.
Mice genetically deficient in vasopressin V1a and V1b receptors are resistant to jet lag.
Science. 2013 Oct 4;342(6154):85-90.
DOI: 10.1126/science.1238599.

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