日本人の適応進化(NL64)

鎌形赤血球をもたらす変異がマラリアなどの感染が多いアフリカ人集団に多く見られたり、高山帯に住むチベット人集団では低酸素に適応した身体を持つ人が多いなど、生活習慣や環境に適応した変化が集団内にみられることがあります。しかしながら日本人集団については、これまでこのような変化が見つかっていませんでした。

理化学研究所などの研究グループは 、日本人2,200人分のゲノムを詳細に解析することにより、過去数千年間において4つの遺伝子領域(ADH1B遺伝子、MHC領域、ALDH2遺伝子、SERHL2遺伝子)が対象となっていたことを明らかにしました。
MHC領域には免疫反応に関わる遺伝子が含まれ、SERHL2遺伝子はその機能が分かっていません。
ADH1B遺伝子とALDH2遺伝子は、お酒に含まれるアルコール(エタノール)の代謝に関わっています。前者はエタノールをアセトアルデヒドに、後者はアセトアルデヒドを無毒な酢酸に分解する働きをしています。
解析結果は、ADH1B遺伝子は活性が早くなる変異が、ALDH2遺伝子は働きが失われる変異が過去2000年ぐらいの間に集団内に広がっていることを示しています。なぜ日本人集団にお酒に弱い変異が広まったのかは今のところ不明ですが、今後、より多くの日本人を地域的背景を考慮に入れて解析することにより、日本人のなりたちの解明や遺伝的背景を考慮した健康管理などに役立つと期待されています。

Deep whole-genome sequencing reveals recent selection signatures linked to evolution and disease risk of Japanese.
Y Okada et. al.
Nature Communications
doi:10.1038/s41467-018-03274-0

理化学研究所プレスリリース

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