大腸菌でジーンズを染める(NL63)
藍色染料のひとつであるインディゴの生産量は2011年には年間5万トンに及び、約40億着のジーンズの染色に用いられています。そのインディゴのほとんどは化学的に合成されたもので、合成や染色の過程で使用された有毒な化学薬品の廃液がそのまま河川に流されていることもあります。
そこで科学者たちは、環境にやさしい染料を作るための研究を行ってきました。2011年には、イ ンディゴの前駆体であるインドキシルをつくる組換え大腸菌がつくられましたが、インドキシルは すぐに酸化して不溶性のインディゴになるために、依然として毒性のある還元剤が必要でした。
アメリカのグループは、その問題を解決するために、藍染用植物がインディゴを水に溶けやすく安定な配糖体(インディカン)として保持することに着目しました。
残念ながら公的データベースには配糖体を作る酵素遺伝子の情報がなかったため、日本のタデアイ(タデ科:インドアイはマメ 科)を材料に、その酵素を精製して調べた部分的なアミノ酸配列の情報をもとに、酵素を作る遺伝子を探索しました。そして、その酵素遺伝子(PtUGT1)を大腸菌に導入したところ、24時間で1L当たり約3gのインディカンができることが分かりました。
ジーンズを染色するにはコストがかかりすぎるとのことですが、環境に良ければ多少高くても購 入する人がいるのではないかと思います。
Employing a biochemical protecting group for a sustainable indigo dyeing strategy.
T Hsu et. al.
Nature Chemical Biology 14 256–261. (2018)
doi: 10.1038/nchembio.2552