人工的な塩基対が大腸菌で複製(NL48)
ほとんどの生命の遺伝情報はATGCの4つの塩基で書かれています。多くの種類の塩基がある中で、なぜこの4つの塩基が普遍的なのかは生物学の大きな謎のひとつです。
また、人工的につくった(非天然型)の塩基対を組み込んで遺伝暗号を拡張することは、新しい生命システムをデザインして組み立てようとする合成生物学者の大きな目標のひとつです。
DNA工学の進歩により、試験管内の実験では、A–T/G–C以外の非天然型塩基対を化学合成して、これらを含むDNA断片の複製や転写が可能になっています。
ただ、このような人工塩基を持った人工生物を作るには細胞に塩基を取り込ませる方法や 、人工塩基を含むDNAがDNA修復システムに排除されずに保持されるかどうかなど、いくつかのクリアしなければならない問題がありました。
そこでアメリカの研究グループは、藻類の核酸輸送体を発現させて、培地中に含まれるXとYという人工塩基を細胞内に取り込めるようにしました。そこに非天然型塩基対を含むDNAを導入したところ、このDNAは複製され、修復システムに排除されることもなく、細胞の増殖にも大きな影響を与えることはありませんでした。
この組み込まれた人工塩基対は、培地中にXとY塩基がなければ排除されるとのことです。
実際のところ多少DNAをいじっても、ゴジラやモスラが誕生することはありません。
DA Malyshev et. al.
A semi-synthetic organism with an expanded genetic alphabet.
Nature 509, 385–388 (15 May 2014)
DOI:10.1038/nature13314