二ホンオオカミのルーツ(NL80)
20世紀のはじめに絶滅したとされるニホンオオカミは、北半球に広く生息するハイイロオオカミの一亜種と考えられています。日本列島には9000 年ほど前からいたことが遺骸などからわかっています。また、2万年ほど前には巨大なオオカミがいたことが化石記録からわかっていますが、両者の関係は長らく不明でした。
そこで、山梨大学を中心としたグループは、5000年前 のニホンオオカミと更新世(3.5万年前)の巨大オオカミのゲノムを比較することにしました。
日本の土壌では化石に残るDNAの状態が悪く、解析が難しいのですが、DNAの抽出方法を工夫するなどにより、従来より多くの遺伝情報を得ることができました。
その結果、
①5.7万~3.5万年前に巨大オオカミの系統が日本列島に流入
②3.7万~1.4万年前にシベリアのオオカミなどとつながりのある別系統が流入
③その後、両者が交雑し、ニホンオオカミが誕生する
という複雑な経路をたどったことがわかりました。
これまでに②の系統の化石は発見されておらず、その特徴はよくわかっていません。
さらに解析を進めることでニホンオオカミが小型化した理由を探ることができるのではないかと期待されています。