一卵性の双子のゲノム比較(NL52)
一卵性の双子は、一つの受精卵が初期の発生段階で二つに分裂して、そこから発育して生まれた2人の子供ですが、妊婦1000人あたり3組程度の割合で一卵性の双子が生まれるそうです。
一つの受精卵から生まれるので、両親から受け継ぐゲノムのDNA配列は全く同じです。一卵性の双子の犯罪捜査や親子鑑定をしても、標準的な法医学のDNA鑑定では違いがわかりません。
そんな中、一卵性の双子のゲノムを区別できないかと研究が進められています。
その一つが、高性能の塩基配列解読装置、次世代シーケンサーを用いた双子の全ゲノム解析です。一卵性の双子でも、その後の発生段階で生殖細胞などにごくわずかな変異が生じる場合があることがわかってきました。ドイツの研究グループが、一卵性の男性の双子の生殖細胞の全ゲノムを解析したところ、片方の双子のゲノムの5カ所に部分的な変異を見いだし、その変異が子供に受け継がれていることを確認しました。5カ所のうち、4カ所は口の中の粘膜細胞、1カ所は血液サンプルのゲノムにも同じ変異が見つかったことから、新手法として期待されています。
しかしながら、現在、この方法は、干し草の山の中にある針を探すようなもので、コストも時間もかかることから、メチル化などDNAの修飾の違いを利用した双子のゲノム比較方法も検討されています。
J Weber-Lehmann et al.
Finding the needle in the haystack: differentiating “identical” twins in paternity testing and forensics by ultra-deep next generation sequencing Forensic Science International: Genetics 2014 Mar;9:42-6 Epub 2013 Nov 8
DOI: 10.1016/j.fsigen.2013.10.015