レム睡眠に関わる遺伝子(NL65)
ヒトが寝ている間には、ノンレム睡眠とレム睡眠が90-110分の周期で繰り返されています。レム睡眠では、脳の一部は起きている時と同じように活動していて、夢を見たり、記憶の定着が起こると考えられています。覚醒やレム睡眠にはアセチルコリンが関係していることがわかっていましたが、遺伝子の特定までには至っていませんでした。
理化学研究所などの共同研究グループは、マウスの脳の睡眠中枢においてTrkA遺伝子が特異的に発現していることを見つけ、TrkA遺伝子が発現している細胞のうちコリン作動性神経が睡眠量の制御に重要であることをつきとめました。16種類あるアセチルコリン受容体遺伝子の中で、Chrm1とChrm3のアセチルコリン受容体遺伝子を同時に働かなくしたマウスでは、睡眠量の減少がみられるとともに、レム睡眠が検出不能なレベルまで減少していることを明らかにし、レム睡眠に関わる遺伝子の同定に成功しました。
マウスでは睡眠の10%がレム睡眠で、ヒトの場合には睡眠の20-25%がレム睡眠といわれています。このマウスをさらに詳しく解析することで、レム睡眠が動物やヒトにとって本当に必要なのか、どのような役割を持っているのかなどの研究が進み、睡眠障害に対する治療法の開発ができると期待されています。
Muscarinic acetylcholine receptors Chrm1 and Chrm3 are essential for REM sleep.
Niwa Y. et. al.
Cell Reports (2018)
Doi: 10.1016/j.celrep.2018.07.082
理化学研究所プレスリリース