ヒトの突然変異率(NL67)
北大西洋北部にある人口約34万人のアイスランドは、10世紀初頭に移住した2万人ほどのノルマン人とゲール人の子孫で構成され、先祖代々の家 系図なども残されています。
そこに目をつけた研究者は、1990年代にdeCODE社を立ち上げ、アイスランド人のゲノムデータの収集と解析を行っています。 今回、deCODE社は15.5万人のアイスランド人の遺伝データから親子のデータを抽出し、子のゲノム配列に新たに入った変異(DNM)について調べました。
DNMは、小児の希少疾患の原因となることが多いのですが、詳細な解析から、DNMは減数分裂時の染色体の組換えに伴うDNA二本鎖の切断部位から1000塩基対以内に起こる割合が他の部分に比べて50倍高いことが分かりました。
また、兄弟/姉妹間の解析から、DNMの数は父親が1歳年を取ると約1.39個、母親では0.38個増加することが分かりました。また、母親が高齢になると、減数分裂時の染色体の乗換えの頻度が上がることも明らかにしました。
deCODE社は、アイスランドの定住第一世代と考えられる1100年前の25人分の頭蓋骨から得たゲノムの解析も行っています。研究が進めば、人類史はもちろん、様々な疾患に関する遺伝的な要因が明らかになるのではないでしょうか。
Characterizing mutagenic effects of recombination through a sequence-level genetic map.
Halldorsson BV. et. al.
Science (2019)
DOI: 10.1126/science.aaw8705
Ancient genomes from Iceland reveal the making of a human population.
Ebenesersdóttir SS. et. al.
Science (2018)
DOI: 10.1126/science.aar2625
The Making of a Human Population Uncovered Through Ancient Icelandic Genomes.