ヒトとチンパンジーの 年齢推定(NL65)

加齢によってDNAにメチル基がつく(メチル化)割合が変化することは以前から知られていました。
2015年にはベルギーを中心とした研究グループが、ヒトのASPAPDE4CELOVL2EDARADDの4遺伝子のDNA配列のメチル化の程度を調べることで、年齢を予測することができることを示しています。
同じく、京都大学の研究グループは、外見からでは年齢を判断することが難しいチンパンジーについて、飼育下で採取され保存されていた血液サンプルを解析し、ELOVL2CCDC102Bの2つの遺伝子のメチル化の程度を調べることで、年齢を推定できる可能性を示しました。今後、野生のチンパンジーの糞などから年齢が推定できるかを検討するとのことです。

この方法を犯罪捜査に応用できればよいのですが、コストと時間がかかることがネックになっていました。京都府警科学捜査研究所の研究者は、ヒトか動物かをDNAから見分ける際に用いる、熱を加えて二重らせんを分離させる方法(高分解能融解曲線分析)で、メチル化の程度を吸い殻についた唾液から測定できることを発見しました。この方法ではELOVL2EDARADDの遺伝子を調べるのですが、一定量のDNAがあれば約半日で解析でき、費用も1回数百円で済むとのことです。

Improved age determination of blood and teeth samples using a selected set of DNA methylation markers.
Bekaert et. al.
Epigenetics (2015)
Doi: 10.1080/15592294.2015.1080413

Estimation of chimpanzee age based on DNA methylation.
Ito H. et. al.
Scientific Reports (2018)
Doi:10.1038/s41598-018-28318-9

京都大学プレスリリース

Forensic age prediction for saliva samples using methylationsensitive high resolution melting: exploratory application for cigarette butts.
Hamano Y. et. al.
Scientific Reports (2018)
Doi:10.1038/s41598-017-10752-w

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