ヒストンをもつウイルス(NL67)

ウイルスはインフルエンザウイルス(ゲノムサイズ1.8万塩基対、遺伝子8個)に代表されるように、かつては「小さくて単純なもの 」というイ メージがありました。その後21世紀に入り、固定観念を覆す大きなウイルス(ゲノムサイズが数十~数百万塩基対)が次々に発見されています。

京都大学らの研究グループは、北海道にある温泉地域からアメーバを宿主とする巨大ウイルスを見つけ、「メドゥーサウイルス」と名付けました。メドゥーサウイルスのゲノムは38万塩基対で、コードされている461個の遺伝子のうち、279個(61%)がデータベースに類似したものがないという、これまで報告されている巨大ウイルスとは一線を画すものでした。
このウイルスの際立った特徴は、ヒストン遺伝子を全セット(5種類の遺伝子)もっていることです。ヒストンは、真核生物のDNAが核内で絡まないようにするためのタンパク質で、遺伝子発現の制御にも関わっています。ウイルスでのヒストンタンパク質の役割はまだよく分かっていませんが、分子系統解析からはその起源が真核生物の共通祖先より古いことが分かっています。
このことは、メドゥーサウイルスが真核生物からこれらの遺伝子を受け取ったのではなく、真核生物の祖先がウイルスから受け取った可能性を示しています。ウイルスが真核生物の誕生に貢献していたとしたら興味深いですね。

A Medusa virus, a novel large DNA virus discovered from hot spring water.
Yoshikawa G. et. al.
Journal of Virology (2019)
DOI: 10.1128/JVI.02130-18

京都大学プレスリリース

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