シーラカンスに肺があった?(NL53)
シーラカンスやハイギョのひれには、骨と筋肉があり、動物の四肢のように交互に動かすことができることから、これらは四肢動物の祖先ではないかと言われています。
シーラカンスのゲノムは2013年に解読され、ハイギョとの251種類の遺伝子のDNA配列比較から、ハイギョの方が四肢動物に近いとされていますが、それぞれの生態については多くの謎があります。(ハイギョはゲノムサイズが膨大で、ゲノムでの比較は困難です。)
ブラジルと欧州の研究グループは、シーラカンスの化石をCTスキャンなどで調べる中で、内臓に謎の器官を見つけ、それが肺であると推測しました。そこで、アフリカで捕獲されたシーラカンスを解剖し、食道に気管の入口となる穴の痕跡を見つけました。
また、孵化前の幼魚と成魚をCTスキャンして内臓部分の三次元復元を行い、発生途中で一度作られた肺が、成魚では機能しない器官になっていることを確認しました。
中生代には発達した肺を持ち、浅瀬を歩くように移動していたシーラカンスの一部が、深海域に移り住み、肺呼吸をしなくなったために肺が退化したと考えられています。
シーラカンスと進化については、大石道夫理事長の著書『シーラカンスは語る 化石と DNAから探る生命の進化(丸善出版)』で紹介されています。ご一読ください。
Cupello C et. al.
Allometric growth in the extant coelacanth lung during ontogenetic development
Nature Communications 2015 Sep 15;6:8222.
DOI: 10.1038/ncomms9222.