コロナウイルスのゲノム(NL71)
Coronavirus disease 2019(COVID-19)は、SARS(重症急性呼吸器症候群)関連コロナウイルスの通称“新型コロナウイルス”によって発症するウイルス性呼吸器疾患です。コロナウイルスはRNAの形でゲノムを保持し、その大きさは約3万塩基です。
ウイルスが細胞内に侵入すると、ゲノムRNAがそのままメッセンジャーRNAとして機能し、ウイルスのタンパク質が合成されます。その うちのひとつはRNA依存性RNA合成酵素で、ウイルスのゲノムが複製されていきます。2003年に流行したSARSでは、ゲノムが解読されたのが、新種のウイルスである可能性が指摘されてから4カ月程経ってからでしたが、今回はそれほど⾧くかかりませんでした。
2019年12月26日に武漢の患者から採取されたウイルスの配列情報は、1月14日には公的データベース(GenBank)に登録されました。 ウイルスの拡散経路は、感染が広がるに従って変異を起こすウイルスのゲノム配列の類似性をもとにした系統解析で追うことができます。例えば、nextstrain.orgというwebsiteでは、研究者が登録したゲノム情報を使用してCOVID-19の世界的な広がりを追跡したレポートを公開しています(https://nextstrain.org/)。
どうやら人類は、新たなウイルスとの戦い方を手に入れたといえます。
A new coronavirus associated with human respiratory disease in China.
Wu F. et.al.
Nature (2020)
DOI:10.1038/s41586-020-2008-3