ゲノムにある進化の痕跡(NL48)

次世代シーケンサーの普及により、多くの種類の生物のゲノムが解 読されています。Web上にあるこうしたデータの比較研究から、ゲノムに残った進化の痕跡が調べられるようになり、1970年に大野乾博士によって提唱された、脊椎動物では進化の初期段階で全ゲノムの重複が1回以上起こったとする「大野仮説」に再び注目が集まっています。

全ゲノム重複とは、2倍体生物のゲノムが倍加して4倍体になり、その後ゲノムの再構成を経て、2倍体のゲノムに戻ることです。
ゲノムの再構成時には新しい機能を持った遺伝子が増え、新しい種が作られる原動力となると考えられています。ただ、ほとんどの脊椎動物での全ゲノム重複は約5億年前のカンブリア紀にナメクジウオに近い祖先種に起こったもので、その後の変化を追うのは困難です。

今回、フランスの研究グループがニジマスのゲノムを解読したことで、サケ類の祖先に約1億年前に起こった全ゲノム重複が確認され、重複後に起こった変化を調べることができるようになりました。ニジマスやフナには3倍体が存在し、環境などによって雌雄が変わる種など様々な種類の魚がいます。ゲノムも3億塩基対のフグから動物界最大のゲノムのDNA量をもつハイギョまで様々です。
実は魚類が進化の研究に一番適した種なのかもしれません。

C Berthelot et al.
The rainbow trout genome provides novel insights into evolution after whole-genome duplication in vertebrates.
Nature Communications 5, Article number: 3657
DOI:10.1038/ncomms4657

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