カイコの性決定のしくみ(NL48)

つい先日、ユネスコの世界遺産登録が決定した群馬県の富岡製糸場では、繭を生糸にする繰糸工場として1872(明治5)年に操業が開始されました。
日本では養蚕業が国を支える重要な産業であり、それにともないカイコを実験材料とした遺伝学研究が行われてきました。

ヒトのY染色体発見の20年以上前の1933年には、カイコの性染色体は雌がWZ、雄がZZで、W染色体があることで性が決まることが報告されています。その後、ヒトなど多くの 哺乳類ではY染色体にあるSRY遺伝子が、性決定に直接関わることが明らかになりましたが、カイコでの仕組みは謎でした。

東京大学の研究グループは、性が決まる時期 の卵(長さ1.5mm)からゲノムDNAとRNAを回収して、DNAで雌雄を判別するとともに、雌で発現している転写産物を探しまし た。
その結果、29塩基の小分子RNAがみつかりました。この転写産物の働きを雌になる卵で人工的に阻害したところ、Bmdsx遺伝子からつくられるタンパク質が雄型になることがわかりました。
このしくみを詳しく研究することで、絹をたくさん作る雄を増やすことや、雌雄の比率を変え、チョウ目害虫(ウンカ等)の防除法が開発できると期待されています。

東京大学プレスリリース

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