カイコがつくるクモの糸(NL50)

クモの糸は丈夫でよく伸びることがよく知られていますが、大量につくることができないため、人工的につくり出そうという試みが行われています。

これまでに微生物でクモ糸のタンパク質を大量につくり、繊維状に加工することには成功していますが、天然のクモの糸に近いものはまだできていません。
2000年に、カイコに他の生物の遺伝子を導入する技術が確立されたことで、クモの糸をカイコにつくらせる研究が世界中で行われています。これまでに日本やアメリカの複数のグループが実験用のカイコ品種にクモの遺伝子の一部を組み込んでクモ糸を含むシルクをつくり出すことに成功していますが、強度的に弱く、少量しか得られませんでした。

そこで農業生物資源研究所のグループは、実際にシルク生産に使っているカイコ品種に遺伝子を導入する技術を開発して、ニワオニグモの遺伝子を用いて、クモ糸シルクをつくり出すことに成功しました。得られたクモ糸シルクの生糸はクモ糸タンパク質を1%程度しか含まないにもかかわらず、含まない生糸の1.5倍の強度を持っていることがわかりました。
カイコに完全なクモの糸をつくらせるためには、大きなクモ糸遺伝子をカイコの対応する遺伝子と置き換える技術が必要です。現在の研究の進捗状況からみると、100%クモ糸のシルクができる日もそう遠くはないことでしょう。

Y Kuwana et al.
High-Toughness Silk Produced by a Transgenic Silkworm Expressing Spider (Araneus ventricosus) Dragline Silk Protein.
PLoS One. 2014 Aug 27;9(8):e105325.
DOI: 10.1371/journal.pone.0105325. eCollection 2014.

生物研プレスリリース

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