ウイルスで進化をたどる(NL53)
およそ7,500年前の中東で、リビアヤマネコから家畜化されたネコが、どのように世界各地に移動して、いろいろな種類のネコが誕生したのかはよくわかっていません。
京都大学のグループは、ネコのゲノムに組込まれている内在性レトロウイルスの染色体上の位置を調べることで、ネコの品種の系統関係を明らかにできることを示しました。レトロウイルスは、細胞に感染するとその遺伝情報を感染した細胞のゲノムに組込みます。この感染が卵や精子の元となる生殖細胞に起こった場合、内在性レトロウイルスとなり、その配列は子孫に伝わります。そのため、ウイルス配列の挿入の有無を調べることで、系統関係を明らかにすることができます。
研究グループはRD-144と呼ばれるウイルスの配列(RDRS)に着目し、いろいろなネコで挿入された位置を調べました。すると、全てのイエネコがC2染色体にRDRSを持つのに対し、ベンガルヤマネコやより遠縁のネコ科動物は持っていないことが分かりました。さらに、アジアや欧米の19猫種、141匹を調べたところ、E3染色体上に別のRDRSが見つかりました。この配列は、欧米種の約半数が持っており、中東から欧州に渡ったグループの一部にこの配列が挿入されて、その子孫が北米にたどり着いたと考えられます。
一方、シルクロードを渡って移動したと考えられるアジア種ではこのRDRSを持つものが4%でした。
あなたのネコは、アジア型?欧米型?
Shimode S et. al.
Multiple invasions of infectious retrovirus in cat genomes.
Scientific Reports 2015 Feb 2;5:8164.
DOI: 10.1038/srep08164.