ウイルスで人種を特定!?(NL63)

犯罪捜査におけるDNA鑑定は一般的になってきましたが、個人を特定するには対象者、もしくは対象者と血縁関係にある人のDNAサンプルとの比較が必須です。最近では、DNA情報から髪や肌の色などを予測できるようになってきていますが、居住地などの情報を得ることができれば、個人を特定できる可能性が上がるかもしれません。

高知大学の研究グループは、皮膚に生息し、皮膚炎や時にがんを引き起こす微生物やウイルスを調べています。そのようなウイルスのひとつ、MCV(メルケル細胞ポリオーマウイルス)は、白人にまれにみられる皮膚がんの原因ウイルスとして発見されました。MCVは約5400塩基対の二本鎖DNAからなりますが、研究グループは、日本人のもつMCVが外国人のものと異なり、25塩基対長いことに気がつきました。
そこで、ボランティアを募り、皮膚に生息するウイルスの遺伝子型を調べたところ、日本人138人のうち129人が長いタイプのMCVをもつのに対し、欧米などの出身者110人では18人のみと、完全ではないもののウイルスの遺伝子型から日本人かどうかが分かる可能性が示されました。ポリオーマウイルスは、幼少期に母子または家族間で感染してからずっと皮膚に感染し続け、別の土地に移住しても変化しないことが多いそうです。
さらなる研究により、犯罪捜査の現場で用いることができるのではないかと期待されています。

Prevalence and Genetic Variability of Human Polyomaviruses 6 and 7 in Healthy Skin Among Asymptomatic Individuals.
Y Hashida et. al.
The Journal of Infectious Diseases, 217(3), 483–493. (2018)
doi:10.1093/infdis/jix516

高知大学プレスリリース

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