代謝で免疫記憶システムをコントロール(NL67)

 免疫反応では、同じ感染症に再びかかることがない、いわゆる「二度なし」現象がよく知られています。外部から侵入した抗原を認識したT細胞の一部が記憶T細胞となり、数十年生き残ることで次の免疫応答に備えるのですが、これまでどのようなしくみで記憶T細胞が形成されるのかは分かっていませんでした。

 最近の研究から、T細胞は分化段階(ナイーブT細胞→エフェクターT細胞→記憶T細胞)に応じて、全く異なる代謝経路を使⽤していることが明らかになってきています。また、脂肪酸の代謝がT細胞の一種、Th17細胞の分化に必須であることから、代謝を制御することでT細胞の分化をコントロールできる可能性が見えてきました。
 
 千葉大学との共同研究では、特殊なマウスを用いて、記憶T細胞の形成過程を調べました。そして、ACC1という脂肪酸合成に関わる酵素の働きを抑制することで、より多くの記憶T細胞が形成されることを発⾒しました。さらに、細胞の代謝状態を調べるメタボローム解析や、特定の遺伝子発現の量を単一細胞レベルで解析する単一細胞遺伝子解析により、ナイーブT細胞の中にACC1遺伝子の発現量が低く記憶T細胞へと分化しやすい「記憶T前駆細胞」があることを示しました。

 これらの研究は、免疫記憶が関わる多くの疾患の予防法や治療法の開発につながることでしょう。