研究体制
A01班:慢性炎症の起点となる細胞老化のリバイバル機構の解明
A01概要
細胞レベルでの老化『細胞老化』の特徴を示す細胞が加齢過程で様々な組織・臓器に認められ、がんを含めた加齢性疾患の発症・病態進行に重要であることが明らかになってきました。実際に老化細胞の除去は、様々な加齢性疾患の病態を改善することが示されていますが、神経細胞などの再生困難な細胞種も細胞老化を引き起こすことも分かり、老化細胞除去技術の副作用が懸念されます。
本研究班では、多階層マルチオミクス解析を軸に、老化細胞リバイバルの鍵となるエピゲノム情報を中心にした基本原理を明らかにすることを目指します。それを基に、『山中因子』を用いることなく『老化細胞リバイバル』を可能にする効果的かつ安全な健康寿命延伸法の分子基盤を構築するとともに、『老化細胞リバイバル』が組織再生能の低下・組織線維化に与える影響を解析することで、個体老化における老化細胞の役割について統合的な理解を最終的な目標とします。
研究代表者
研究協力員
大森 徳貴
ブロード研究所 博士研究員
金沢大学がん進展制御研究所 がん・老化生物学研究分野
隈本 宗一郎
金沢大学がん進展制御研究所 がん・老化生物学研究分野 特任助教
A02班:組織線維化の筋線維芽細胞におけるリバイバル機構の解明
A02概要
線維化は、加齢性疾患や慢性炎症疾患に伴う組織障害に応答して全身臓器に現れる共通した病態であり、過剰な線維化は臓器本来の機能を障害し、がんの発生母地ともなることから、その制御法の開発は多くの疾患を克服するための鍵となります。臓器が異なってもコラーゲン線維を産生する細胞は、組織常在性の線維芽細胞が障害に応答して活性化したα-smooth muscle actin (αSMA)を発現する筋線維芽細胞です。本研究では、臓器を限定しない線維症の革新的制御法の開発に向けて、主要な臓器である肝臓・腎臓・膵臓の筋線維芽細胞を正常な状態へ戻す『組織線維化のリバイバル』について、細胞やエピゲノムのレベルで線維化誘導機構との関連性、臓器間の共通性・特異性を包括的に理解し、その生理学的意義を個体レベルで検証します。
研究代表者
研究分担者
研究協力員
西條 栄子
東京大学 定量生命科学研究所 大規模生命情報解析研究分野
技術専門職員
A03班:部分的な細胞リセットによる組織再生能リバイバル機構の解明
A03概要
本研究班では、老化リバイバル研究の一環として、老化や疾病によって不可逆的に減弱する組織再生能を再活性化する手法の確立を目指しています。老化はほとんどの生物で認められ、緩やかですが確実に進行することで、個体の機能低下が引き起こされます。この個体の機能低下は分子・細胞・組織・臓器の各階層での不可逆的な変化が統合されて引き起こされると考えられています。最近になって、加齢による不可逆的な変化を巻き戻し得る研究成果が相次いで報告されるようになってきましたが、こうしたリバイバルがあらゆる文脈で可能であるかどうかは未だ不明です。また、リバイバルの分子機序についてもこれまで明らかにされていません。本研究班では、班員が独自に確立した部分的な細胞リセット手法を活用して、リバイバル機構のメカニズム解明と、それに基づく組織若返り手法の開発を目指しています。
研究代表者
研究分担者
A04班:老化時計のリバイバル機構の解明に向けたマルチオミクス解析法の開発と応用
A04概要
本研究ではマルチオミクス研究を通じて、リバイバル機構の基本原理の解明を目指します。特に、老化や線維化のリバイバル過程におけるエンドプロダクトーム(メタボローム、リピドーム、グライコーム)の解析を中心に行い、各生命プロセスにおける分子の挙動と関連性を調べることを計画しています。これにより、エンドプロダクトの中から老化および抗老化マーカー分子が見出されるだけでなく、リバイバル現象に強く相関が認められる代謝パスウェイ等の描出が可能となることが期待されます。また、トランスクリプトームやエピゲノム情報をさらに統合し、リバイバルの各系における、遺伝子発現や代謝パスウェイ、エピゲノムの共通性と特異点を見出します。さらには、こうしたマルチオミクス解析によるデータセットを統合し、共有データベースと可視化ツールを含むマルチオミクスデータの活用基盤の構築も進めます。
研究代表者
研究分担者
アドバイザー
宮島 篤(東京大学定量生命科学研究所、教授)
中西 真(東京大学医科学研究所、教授)
中島 欽一(九州大学大学院医学研究院、教授)
山田 泰広(東京大学大学院医学研究科、教授)
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